「駐在員のビザはいつ取れますか」とよく聞かれます。本人の書類は揃っているのに、そこから手続きが進まないことがあります。
ここでいう「ビザ」には、就労のための労働許可証と、在留のためのTRC(一時在留許可証)という二つの証書が含まれます。どちらも本人の名前で交付されますが、申請も、返納や保証の終了も、会社が行う建て付けになっています。本稿では要点と、会社が準備しておくことをまとめます。詳しい解説は、InfoBankに寄稿した記事をご覧ください。
(InfoBank)ベトナム駐在員の労働許可証とTRC|会社が担う申請と責任
手続きの主体は会社
労働許可証は、就労開始予定日の60日前から10日前までの間に、雇用主である会社が申請します。申請書類には、その外国人を雇う必要性についての会社の説明も含まれます(政令219/2025/NĐ-CP第18条・第22条)。労働契約が終われば労働許可証は失効し、会社が15日以内に回収して返納します(同第30条・第31条)。
TRCも、外国人を招聘し身元を保証する会社が、出入国管理機関に申請します(出入国管理法47/2014/QH13第37条)。保証の必要がなくなれば、TRCの有効期間が残っていても、会社が入管に通知します(同第45条)。
名前は本人のものでも、資格は会社に紐づいていると考えるほうが実態に近いといえます。
時間がかかる理由
条文上の処理期間は、労働許可証が書類が揃ってから10営業日、TRCが5営業日です。しかし実務では、労働許可証の取得に1か月ほどかかり、TRCの審査中はパスポートを10営業日程度、当局に預けることになります。
当社が支援しているホーチミン市の案件では、入管の受付票に記載される受け取り予定日は条文通り、受付から5営業日後ですが、実際に受け取れたのは受付から10営業日ほど後でした。受付票の日付を前提に出国などの予定を組むと、ずれることがあります。
また、TRCの申請では、会社がベトナム人従業員を雇用し、社会保険を納めていることが求められています。法令に書かれた要件ではなく、当社が支援しているホーチミン市の案件では、2026年の春先から見られるようになった運用です。設立直後の法人には雇用や納付の実績がないため、ここで数か月の遅れが生じることもあります。
申請や受け取りで窓口に出向く会社の社員が、担当官から質問を受けることもあります。会社の外国人従業員の数や事業内容、その社員自身の勤続期間などを聞かれることがあります。入管での別の手続きでは、申請番号や、申請のメールが会社のアドレスから送られていない理由などについて、窓口に出向いた社員本人が答えられるかを確かめられた例もありました。なお、同じ日に別の担当官が扱った案件では何も聞かれなかったこともあり、何を聞かれるかは担当官次第です。
こうした運用は、予告なく変わります。求められる書類の形式や、窓口に出向く人、その他の要件が、手続きの途中で変わった例もありました。今の運用が先々も続くとは限らず、別の要件が加わることもあり得ます。
会社が準備しておくこと
着任までの流れに沿って、2026年9月時点の運用を前提に、会社側で準備しておくことを並べます。
- 設立と並行して、ベトナム人の採用と社会保険の加入を検討する。
- 着任日の60日前から10日前までに、労働許可証を申請する(実務では約1か月かかる)。
- TRCのために、3〜5週間の連続滞在を先に予定表に入れる(居住証明取得も必要なため)。
- 入国スタンプの手書きの滞在期限を、その場で確認する。
- 入国直後は、居住証明をすぐ出してくれる宿に入る。
- 窓口に行く社員が、申請番号や支払記録、会社の外国人従業員数や事業内容を答えられるようにしておく。
運用そのものは、会社の側では変えられません。会社にできるのは、着手を早めて、変化に気づき柔軟に対応できる時間を残しておくことです。
関連記事:ベトナムWP・TRC申請に会社eIDが必要に?新設FDI法人が注意すべきVNeID実務
本稿は2026年9月末時点の情報にもとづいています。
駐在員の受け入れを準備している方へ
設立から労働許可証・TRCの取得まで、会社側の手続きをまとめてお手伝いします。