ビザ免除で入国し、45日が来る前に出国して、また入国する。いわゆるビザランを繰り返しながら、日本の会社の仕事を続けてベトナムで暮らす人がいます。
こうした暮らし方は、在留も税金も「グレーだ」と言われがちです。ただ、両者の性質は同じではありません。条文で決まっていることと、決まっていないことを分けて整理します。
本稿は日本の会社から給与を受けている方を前提とし、業務委託やフリーランスの方の所得は扱いません。
先に結論をまとめます。
| 論点 | 整理 |
|---|---|
| ビザ免除での再入国を繰り返すこと | 一律に禁じる明文規定はない。入国の可否はその都度の審査 |
| 短期滞在の制度で実質的に住むこと | 入国目的との適合が条文で決まっておらず、不確実 |
| 日本の会社の仕事を続けること | 労働許可証の制度が想定しておらず、手続きが見当たらない |
| 税金(居住者) | 183日または定常的居所で居住者。日本払いの給与も申告対象 |
| 税金(非居住者) | ベトナムでの勤務に対する給与は原則20%。条約免税は申請して初めて効く |
Q1 ビザランそのものは禁止されていますか
再入国を繰り返す行為を一律に禁じる明文規定は確認できません。ただしこれは、再入国が常に認められることを意味しません。
以前は、ビザ免除で入国するには、前回ベトナムを出国してから30日以上空ける必要がありました。いわゆる30日ルールです。この規定は改正法51/2019/QH14で削除され、2020年7月1日から適用されています。
公安省がウェブサイトのQ&Aで示している法令上の要件は、パスポートの残存期間が6か月以上あることと、入国禁止の対象でないことの二つです。2023年に滞在期間が15日から45日に延びた改正でも、追加の条件は設けられていません。再入国の回数や間隔についての制限もありません。
一方で、実際に入国できるかどうかは、その都度の入国審査で判断されます。法令上の要件を満たしていることと、審査を通ることは別です。
なお、45日を超えて滞在を延ばすには、保証する機関や親族を立ててビザの発給や滞在延長を受ける手続きが別に必要で、本人だけで延ばす仕組みにはなっていません。
Q2 では、問題はないのですか
決まっていないことが二つあります。
一つは、入国目的との関係です。日本人は入国目的を問わず45日間滞在できますが、出入国管理法は外国人の義務として、ベトナムでの活動は入国目的に適合しなければならないと定めています。短期滞在のための制度を繰り返して実質的に住むことがこれに反するかどうかは、条文からは決まりません。入国のたびに、その場で判断されることになります。
もう一つは、就労資格です。労働許可証の制度は、ベトナムの雇用主が外国人を雇うことを前提に組まれています(政令219/2025/NĐ-CP)。日本の会社に雇われたままベトナムで働く人は、列挙された就労形態にも、免除の類型にも、素直には当てはまりません。制度上の手続きが見当たらないことは、許可が不要であることを意味しません。不要と言い切れる根拠もなく、取る道筋もない、というのが実態です。
短期滞在と長期の生活設計をどう分けて考えるかは、ノマド・フリーランスのベトナム滞在|短期滞在と長期設計は分けて考えるでも整理しています。
Q3 ノービザなら、税金は関係ないのでは
ここは条文で決まっています。在留の扱いが不確実であることと、税金の扱いは別です。
政令253/2026/NĐ-CP第4条は、暦年、または入国初日から連続12か月の間に183日以上ベトナムに滞在する人を居住者としています。入国日と出国日は、それぞれ1日と数えます。ビザランで年の大半を過ごせば、ここで居住者になります。
また、課税年度内で通算183日以上の賃貸契約がある場合も、定常的居所を持つ者として扱われます。この場合、実際の滞在が183日未満でも、他国の居住者であることを証明できなければ居住者になります。ビザ免除で入国しているかどうかは関係ありません。
居住者判定の詳しい整理は、ベトナムの税務居住者判定|TRCがあっても非居住者でいられるをご覧ください。
居住者になれば、全世界所得が課税対象です。日本の会社が日本の口座に振り込む給与も、ベトナムで申告する必要があります。どの口座に振り込まれたかで課税地は決まりません。ベトナム側に給与の支払者がいないため、本人が居住地の税務署へ直接、四半期ごとに申告し、年次で確定申告します(通達89/2026/TT-BTC第22条)。
なお、ベトナムで居住者になったからといって、日本側の課税関係が当然になくなるわけではありません。日本側については、ベトナムの判定とは別に、日本で確認が必要です。
Q4 183日以下でも、ベトナムで税金はかかりますか
原則として、かかります。居住者でなくても、ベトナム国内で行った仕事に対する給与は、支払地を問わず課税対象です。税率は20%です(個人所得税法109/2025/QH15)。
ただし日越租税条約第15条第2項により、次の三つをすべて満たせば、ベトナムでは課税されず日本でのみ課税されます。その暦年のベトナム滞在が合計183日以下であること。給与がベトナムの居住者でない雇用者から支払われていること。給与がベトナムにある恒久的施設によって負担されていないこと。
この免税は、自動では効きません。初回の税務申告書を出す日に、本人が直接、またはベトナム国内の人に委任して、税務署へ免税の申請書(様式01/HTQT)と、日本の税務当局が発行した居住者証明(領事認証済み)を提出します。何もしなければ、条文上は免税の対象でも、当局からは未申告に見えます。
Q5 長く住むなら、どうすればいいですか
ベトナムに長く住む前提であれば、在留を正規の形に切り替える道もあります。たとえばベトナムに法人を設立し、その会社で労働許可証を取り、TRC(一時在留許可証)を取得する流れです。手続きの全体像は、駐在員の労働許可証とTRC、手続の主体は会社|時間がかかる理由をご覧ください。
まとめ
ビザランを一律に禁じる明文規定はありません。一方で、入国目的への適合と就労資格は条文で決まっておらず、在留は入国のたびに判断されるものとして残ります。
これに対して税金は、滞在日数と住居で条文どおりに決まり、183日以下で免税を受ける場合も申請が要ります。何が決まっていて、何が決まっていないのか。それを知ったうえで、どう暮らすかを選んでいただければと思います。
根拠資料
- 30日ルールの撤廃、ビザ免除の要件:公安省ウェブサイト「Hỏi đáp」掲載の回答
- 45日のビザ免除:決議44/NQ-CP(2025年3月7日)
- 入国目的への適合義務:出入国管理法47/2014/QH13
- 居住者判定、定常的居所:政令253/2026/NĐ-CP第4条
- 国外払い給与の四半期申告:通達89/2026/TT-BTC第22条
- 非居住者の税率:個人所得税法109/2025/QH15
- 条約免税の3要件:日越租税条約第15条第2項(財務省公表の統合条文)
- 免税申請の手続き:財務省の行政手続き一覧、通達89/2026/TT-BTC