ベトナム法人では、会計年度終了後に、年次財務諸表の作成、法定監査、法人所得税(CIT)の確定申告を行います。
特に外資企業は、年次財務諸表について、ベトナムで監査業務を行う資格を有する独立監査法人による法定監査が必要です。
年次決算では、単に1年間の数字を集計するだけでなく、銀行残高、売掛金・買掛金、在庫、固定資産、給与、税務申告、日本本社や関係会社との取引などを確認し、会計帳簿、監査済財務諸表、CIT確定申告の数字を整合させる必要があります。
本稿では、ベトナム法人の年次決算について、期限、CITの仮納付、実務スケジュール、監査に必要な資料、対応が遅れやすいポイントを整理します。
年次決算や監査法人対応を含む実務支援は、ベトナム法人の会計・税務・監査法人対応支援もご覧ください。
※本稿は2026年7月時点の法令・実務を前提としています。
ベトナム法人の年次決算で必要な手続
年度末には、主に次の3つの手続を進めます。
年次財務諸表の作成
会計帳簿を締め、年度末の資産、負債、売上、費用、利益などを確定し、年次財務諸表を作成します。
法定監査
外資企業を含む法定監査対象企業は、独立監査法人による監査を受けます。
監査法人は、会計帳簿、証憑、契約書、銀行資料、税務申告書などを確認し、年次財務諸表について監査意見を表明します。
監査法人が行う独立監査と、会計事務所が行う決算整理や監査資料の準備は、別の業務です。
CIT確定申告
財務諸表上の会計利益を基礎として、損金不算入費用、繰越欠損金、税制優遇、年度中に仮納付したCITなどを調整し、年間のCIT納付額を確定します。
会計上の利益と税務上の課税所得は、必ずしも一致しません。
年次決算・監査・CIT確定申告の期限
12月決算法人の一般的な期限は、次のとおりです。
| 手続 | 一般的な期限 |
|---|---|
| 監査契約の締結 | 決算年の12月1日まで |
| 第4四半期までのCIT仮納付 | 翌年1月末 |
| 年次財務諸表 | 会計年度終了後90日以内 |
| 法定監査報告書 | 年次財務諸表の提出前 |
| CIT確定申告・追加納付 | 翌年3月31日まで |
年次財務諸表は、原則として会計年度終了後90日以内に所管当局へ提出します。また、法定監査が必要な財務諸表は、所管当局への提出前に監査を完了させる必要があります。
CIT確定申告は、原則として会計年度終了後3か月目の末日までに提出し、追加納付がある場合は同じ期限までに納付します。
監査契約は12月1日まで
独立監査法では、法定監査対象企業の年次財務諸表に関する監査契約を、年次会計期間終了日の少なくとも30日前までに締結することとしています。
したがって、12月31日決算法人の場合、法令上の監査契約締結期限は、遅くとも12月1日です。単に監査法人の候補を決めるだけでなく、監査契約の締結まで完了させる必要があります。
実務上は、監査日程や年度末の棚卸立会いの日程を確保するため、9月から11月頃までに監査法人の選定を進める方が安全です。
CITの四半期仮納付と80%ルール
ベトナム法人は、各四半期の事業実績に基づいてCITを計算し、四半期ごとに仮納付します。
2025年税務管理法(法律第108/2025/QH15号)およびその施行政令である政令252/2026/NĐ-CPは、2026年7月1日から施行されています。
政令252/2026/NĐ-CP第24条により、四半期CITの仮納付期限は、原則として翌四半期の最初の月の末日です。12月決算法人の場合、第4四半期分の期限は翌年1月末となります。
また、第1四半期から第4四半期までに仮納付したCITの合計額は、企業が年次確定申告で申告する年間納付税額の80%以上でなければなりません。
例えば、年次CIT確定申告における納付税額が1億VNDの場合、1月末までの仮納付額の累計を、原則として8,000万VND以上にする必要があります。
80%を下回った場合は、不足額について、第4四半期の仮納付期限の翌日から、実際に不足額を納付する前日までの延滞利息が発生します。
そのため、12月決算法人では、1月中に年間の課税所得とCITを見積もり、それまでの仮納付額で80%を満たすか確認することが重要です。
12月決算法人の実務スケジュール
9月から11月
監査法人を選定し、遅くとも12月1日までに監査契約を締結します。
あわせて、長期間動いていない債権債務、仮払金、親会社取引、資本金、借入金、固定資産、在庫、給与、税務申告などを確認します。
年度終了前に問題を把握できれば、必要な証憑の回収や会計処理の修正を進められます。
12月
在庫、現金、銀行預金、売掛金、買掛金、借入金、固定資産などの年度末残高を確認します。
商品や原材料を保有する会社では、実地棚卸を行い、在庫台帳との数量差異を確認します。
1月
12月分までの会計資料を回収し、会計帳簿を締めます。
減価償却、前払費用、未払費用、外貨換算、在庫評価、証憑不足費用、関係会社残高などの決算整理を進めます。
あわせて、年間の課税所得とCIT納付見込額を計算し、第1四半期から第4四半期までのCIT仮納付額が、年間CIT見込額の80%以上となるかを確認します。
不足が見込まれる場合は、原則として1月末までに追加で仮納付します。
2月から3月
監査法人へ資料を提出し、監査質問や修正事項に対応します。
監査修正を反映した財務諸表を完成させ、CIT確定申告を提出します。
監査修正によって利益や費用が変わる場合、CIT計算にも影響するため、監査とCIT確定申告を並行して進めることが重要です。
法定監査で準備する主な資料
会社の業種や取引内容によって異なりますが、一般的には次の資料を準備します。
- 試算表、総勘定元帳、財務諸表ドラフト
- 銀行明細、銀行残高証明書
- 売掛金、買掛金、未払金の明細
- 契約書、電子インボイス、支払証憑
- 在庫表、固定資産台帳
- 給与、PIT、社会保険資料
- VAT、FCT、CITの申告・納付資料
- 日本本社・関係会社との取引資料
- 資本金、借入金、DICAに関する資料
資料が存在するだけでなく、会計帳簿、契約内容、インボイス、銀行送金、実際の取引内容が一致している必要があります。
決算・監査が遅れる主な原因
年次決算や法定監査が遅れる会社では、次のような未処理事項が残っていることが多くあります。
- 銀行残高と会計帳簿が一致していない
- 売掛金・買掛金の残高が相手先と一致していない
- 在庫数量と在庫台帳が一致していない
- 契約書、インボイス、検収書が不足している
- 日本本社の立替払いや関係会社取引が整理されていない
- VAT、PIT、FCT、CITの申告額と会計帳簿が一致していない
これらを年度末にまとめて修正しようとすると、監査資料の提出やCIT計算が遅れます。
月次会計の段階で、残高、証憑、税務申告との整合性を確認しておくことが重要です。
この点は「ベトナム法人の月次バックオフィス運用」の記事も参照してください。
よくある質問
赤字でもCIT確定申告は必要ですか
原則として必要です。
納付税額がなくても、会計利益、税務調整、課税所得、繰越欠損金などを申告します。
売上がなくても法定監査は必要ですか
外資企業の場合、売上や利益がないことだけを理由に法定監査が免除されるわけではありません。
設立準備中や休眠状態であっても、資本金、銀行残高、設立費用、未払金などについて財務諸表を作成し、監査を受ける必要があります。
設立初年度が短い場合も決算が必要ですか
原則として必要です。
ただし、最初の会計年度が90日未満の場合は、一定の条件のもとで翌年度と合算できます。合算後の会計期間は15か月未満でなければなりません。
日本本社向け決算とベトナム法定決算は同じですか
必ずしも同じではありません。
ベトナム法定財務諸表はベトナムの会計制度に基づいて作成します。一方、日本本社向けには、日本基準やIFRSへの組替え、連結パッケージの作成、グループ指定様式での早期報告が必要になる場合があります。
年次決算は年度末から始めない
ベトナム法人の年次決算、法定監査、CIT確定申告は、年度終了後にすべてを準備するものではありません。
監査法人の選定、監査契約の締結、残高確認、証憑回収、関係会社取引の整理は、年度末前から進める必要があります。
また、12月決算法人では、3月末のCIT確定申告だけでなく、1月末までのCIT仮納付と80%ルールにも注意が必要です。
毎月の会計帳簿、税務申告、銀行残高を適切に確認しておけば、年次監査の負担、CIT仮納付の不足、決算時の大幅な修正リスクを抑えられます。
EACHに相談できること
EACH VIET NAMでは、ベトナム法人の年次決算、CIT確定申告、監査法人対応について、次の業務を支援します。
- 年次会計帳簿の確認
- 決算整理仕訳
- 年次財務諸表の作成
- CIT仮納付額の確認
- CIT確定申告
- 監査資料の準備
- 監査法人からの質問・修正事項への対応
- 日本本社への説明
- 日本基準・IFRS・連結パッケージへの組替え支援
監査業務そのものは、ライセンスを有する独立監査法人が実施します。
EACHは、会計・税務実務、日本語での論点整理、監査法人との連絡・進行管理を支援します。
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