ベトナム税務上の居住者認定は「183日ルール」だけでは決まらない

■ ベトナムの個人所得税では、「183日以上滞在したら居住者」という説明がよく使われます。
ただし、実際の法令はそこまで単純ではありません。183日基準だけでなく、一時滞在カード(TRC)や課税年度内183日以上の住宅賃貸契約など、ベトナムに定常的居所があるかどうかも居住者判定の要素になります。したがって、実務上は「183日未満だから直ちに非居住者」とまでは言えません。

■ 私見では、少なくとも次の2つのケースでは、非居住者と考えやすいと思います。
① ベトナム滞在が183日未満で、TRCがなく、課税年度内183日以上の住宅賃貸契約もない場合
この場合は、183日基準にも当たらず、定常的居所を示す要素も弱いため、比較的素直に非居住者と考えやすいと思います。
② ベトナム滞在が183日未満で、TRCを保有している、または課税年度内183日以上の住宅賃貸契約がある場合でも、他国の居住者証明がある場合
この場合も、条文の構造からは非居住者とみる余地があります。もっとも、この点は法令に明快に書かれているわけではありません。条文上は、「他国の居住を証明できない場合はベトナム居住者とする」とされており、その反対解釈によって非居住者を導く形になるためです。

■ この②の扱いについては、専門家の間でも見解が分かれます。
「183日未満で、かつ他国の居住者証明があれば足りる」とみる立場もあれば、TRCや長期の住宅契約がある以上、なお慎重にみるべきだという立場もあります。つまり、この論点は「答えがない」というより、法令の書きぶりがやや曖昧で、実務上の解釈に幅があるというのが実態です。

■ 最近は、この②のケースが実務上むしろ増えている印象があります。
背景のひとつがVNeIDです。法人・組織の電子身分認証アカウント申請では、法定代表者等が自らのレベル2アカウントで手続を行うため、外国人についても個人としてVNeIDが必要になる場面が増えています。ところが、外国人がVNeIDを取得するには、原則としてTRCまたは永住カードの保有が前提です。その結果、税務上は非居住者と考えたい一方で、行政実務上はTRCを持つ、というケースが生じやすくなっています。

■ 居住者か非居住者かによって、課税関係は大きく変わります。
居住者であれば全世界所得が課税対象となり、非居住者であれば原則としてベトナム源泉所得のみが課税対象となります。給与所得の税率も変わるため、この判定は形式的な話ではなく、実務上かなり重要です。

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