2026年分は、新しい個人所得税法(109/2025/QH15)が給与所得に初めて適用される年です。法律の施行は2026年7月1日ですが、給与については1月から12月までの1年分すべてが新しいルールで計算されます。一方、日本払いの給与や会社負担の家賃、着任・帰任の年の扱いなど、駐在員がつまずきやすい点はこれまでと変わりません。
本稿では、今年変わることと変わらない注意点を分けて、条文と当社の案件にもとづいて整理します。
2026年分で変わること
税率は7段階から5段階になり、本人控除と扶養控除が上がりました。
| 項目 | 2025年分まで | 2026年分から |
|---|---|---|
| 税率 | 7段階(5〜35%) | 5段階(5%・10%・20%・30%・35%) |
| 35%がかかる所得 | 月8,000万ドン超 | 月1億ドン超 |
| 本人控除 | 月1,100万ドン | 月1,550万ドン |
| 扶養控除 | 1人月440万ドン | 1人月620万ドン |
| 食事手当の非課税枠 | 月73万ドン | 月120万ドン(2026年7月から) |
根拠は、個人所得税法109/2025、国会常務委員会決議110/2025、政令253/2026(2026年7月1日施行)です。税率の区分が広がったため、所得の多い駐在員ほど税額が下がります。例えば、控除後の課税所得が月1億5,000万ドンの場合、税額は旧税率では月4,265万ドン、新税率では月3,800万ドンです。
1〜6月の源泉は、確定申告で精算する
新しい政令が出たのは2026年6月末でした。そのため、1〜6月の源泉をどちらの税率で計算するかは、会社によって判断が分かれました。政令253第70条では、1〜6月に申告・納付した分は出し直す必要がなく、差額は2026年分の確定申告で調整するとしています。
当社が給与計算を担当している会社では、1月分から新しい税率と控除で計算しています。旧税率で源泉していた会社の場合は、確定申告で差額が戻ります。上の例なら差は月465万ドンで、6か月分で約2,800万ドンです。
医療費と教育費の控除ができた
本人と扶養家族の医療費は年2,300万ドンまで、教育費は年2,400万ドンまで、課税所得から差し引けるようになりました。対象は、ベトナム国内の医療機関・教育機関に払った費用です。本人か扶養家族の名義の請求書や領収書が必要で、保険や会社から支払われた分は対象外です。この控除を受けるには、会社に任せず、本人が確定申告をする必要があります(政令253第49条)。
会社に任せられる条件が、一部広がった
会社に確定申告を任せる場合、ほかの収入があってもよい上限が、月平均1,000万ドンから1,500万ドンに上がりました。日本払いの給与がある場合の扱いは、次の段で説明します。
扶養家族の登録は、12月31日まで
政令253では、扶養家族はその年の12月31日までに登録することになりました。期限を過ぎると、その年の分は扶養控除を受けられません。
これまでと変わらない、駐在員の注意点
確定申告の期限は以前と同じです。会社が代わりに申告する場合は2027年3月末、本人が申告する場合は4月末で、祝日に当たる場合は翌営業日になります。
日本払いの給与がある人は、自分で申告する
会社に確定申告を任せられるのは、次の条件を満たす人です(政令253第51条2項)。
- 3か月以上の労働契約を結んだ1社からの給与だけがある
- 確定申告の時点で、その会社に在籍している
- ほかの収入は、月平均1,500万ドン以下で10%源泉済みであれば、あってもよい
駐在員に多いのは、給与の一部を日本本社が日本で払っている形です。当社が関わる案件では、日本払いの分は本人が四半期ごとに税務署へ直接申告し、ベトナム払いの分は会社が源泉して申告しています。日本払いとベトナム払いを合算した税額から日本払い分の税額を差し引き、残りを会社が源泉します。本人控除と扶養控除は、ベトナム払いの側で差し引きます。
この形は「1社からの給与だけ」に当たらないため、確定申告は本人が行います。医療費・教育費の控除を受ける人も、前の段のとおり本人が申告します。毎四半期の申告を会社の担当者や会計事務所が作っていても、確定申告は本人の名義です。2026年は4月30日・5月1日の祝日と週末が重なり、当社の案件では納付期限が5月4日でした。
会社負担の家賃は、課税所得全体の15%が上限
会社が払う家賃は実際の額が課税所得になりますが、家賃を除いた課税所得全体の15%が上限です(政令253第8条)。この「全体」には、日本払いの給与も含めて計算します。当社が担当した確定申告では、毎月の源泉で家賃が課税所得に入っていなかったことが、確定申告の段階で見つかりました。
日本にいる家族も、扶養に入れられる
日本にいる配偶者や子も、扶養に入れられます。18歳以上でも、大学などに在学中で収入がない子は対象です。登録には続柄を示す書類が必要で、日本で発行された書類を使う場合は準備に時間がかかります。登録の期限が12月31日なので、早めに手配してください。
着任した年と帰任する年
着任1年目に暦年で183日に届かなくても、到着から12か月で183日以上いれば、その12か月が最初の精算期間になります。期限は、12か月が終わった月から4か月目の末日です(政令252第10条5項)。2年目からは暦年で精算します。
当社が担当した日系企業の社長の例では、2024年10月に着任し、最初の12か月(2025年9月まで)の確定申告の期限が2026年1月末でした。そのあと、2025年の暦年分も別に申告しています。必要だったのは、次の書類です。
- ベトナム法人の源泉徴収証明書
- 日本本社が発行する所得の確認書
- 日本の源泉徴収票と税務署の証明書
- 本社との雇用契約書
- 四半期ごとの申告書と納付書
- 還付金の受取口座
日本本社の確認書は、ベトナムの書式に合わせて当社が用意し、本社に署名・押印してもらいました。それでも一部は期限に間に合わず、あとから追加で提出しています。ベトナム法人が出した源泉徴収証明書も、数字の食い違いが見つかり、3〜9月分を出し直してもらいました。
帰任するときは、出国前に確定申告をします。期限は、契約終了から45日以内です(政令252第10条5項)。
年内に準備しておくこと
- 1〜6月の給与明細で、どちらの税率で源泉されていたかを確認する
- 扶養家族の登録を12月31日までに済ませる(日本にいる家族の書類も含む)
- ベトナム国内の医療機関・教育機関の請求書と領収書を保管し、控除を受けるなら自分で申告する準備をする
- 日本払いの給与の明細をそろえ、日本本社に所得の確認書を依頼する
- 会社負担の家賃が、毎月の計算に入っているかを確認する
本稿は2026年10月時点の法令にもとづいています。
関連ページ:ベトナムの税務居住者判定/日本法人とベトナム法人の両方から給与を受ける場合の個人所得税
駐在員の確定申告を確認したい方へ
2026年分の源泉の内容と、日本払いの給与があるかどうかをお知らせください。確定申告で必要になる書類と手順を、日本語で整理します。