ベトナム法人税減税、現場で混乱
■2025年のベトナム新法人税法では、法人税の原則税率20%は維持しつつ、一定規模以下の企業向けに15%・17%の低税率枠が新設されました。具体的には、年間総売上が30億VND以下で15%、30億VND超50億VND以下で17%です。法律自体は2025年6月14日に成立し、2025年10月1日施行ですが、適用は2025法人税年度からとされています。
■条文だけを見ると、比較的わかりやすい制度です。「売上が一定規模以下なら17%または15%になる」と読みたくなる内容でもあります。ただ、現場ではそこまで単純に運用されていません。制度の骨格は示されたものの、年次確定において細かい論点が次々に出てきており、担当者ごと、税務署ごとに感触がずれるケースも出ています。
■ややこしいのは、判定基準が当期利益ではなく、前期の総売上をベースにしている点です。さらに、15%・17%の低税率は、売上基準を満たせば自動的に会社全体へ一律適用される、というほど単純でもありません。法令上、一定の所得類型には適用しないという内容があり、実務では「会社が小さいか」だけでなく、「どの所得にその税率を当ててよいのか」まで見ないと判断がぶれます。
■このため、四半期の時点では17%で仮計算して進めたとしても、それで年次確定まで通るとは限りません。ベトナムの法人税は、四半期ごとに仮納付(仮申告)を行い、最後に年度確定申告で精算する建付けです。しかも、4四半期の仮納付総額が年次確定税額の80%を下回ると、延滞金の論点も出てきます。つまり、四半期の見込み処理と年度確定時点の最終判断とがずれる余地が、制度上もともとあります。
■実際、四半期申告時には17%で処理したものの、年度確定申告の段階で税務署から20%に修正するよう求められたケースも出ています。ここが、今の混乱をよく表していると思います。制度はある。しかし、使えるかどうか、最後までその税率で通るかどうかは別問題です。
■2025年の法人税減税は、使える会社にとっては有利です。ただし、売上規模だけで機械的に判断できる制度ではありません。前期売上、所得区分、除外対象の有無、区分経理、そして年度確定まで見据えて判断しないと、あとで税率を20%に戻される可能性があります。いま現場が混乱しているのは、担当者の理解不足というより、制度がまだ実務運用の中で固まり切っていないから、と見るほうが実感に近いでしょう。

