「183日以上いなければ非居住者」。この理解のまま処理して、後から問題になる例があります。判定基準は滞在日数だけではありません。TRC(一時居住証)を持っているか、183日以上の賃貸契約があるか。この二つも直接効きます。
居住者と非居住者では課税範囲が変わります。非居住者はベトナムを源泉とする所得のみが対象で、給与には一律20%。居住者は全世界所得が対象です。
判定基準は「いずれか」に該当するか
現行法は個人所得税法109/2025/QH15と政令253/2026/NĐ-CPです。政令第4条は、居住者を次のいずれかに該当する者と定めています。
- 暦年、またはベトナム初入国日から連続12ヶ月において183日以上の滞在
- ベトナムに定常的居所がある(TRC申請時の届出住所、または183日以上の賃貸契約)
「いずれか」です。滞在が183日未満でも、定常的居所があれば居住者に該当しえます。TRCを取得した時点で、後者に該当することになります。
TRCがあっても非居住者でいられる
政令第4条3項は、定常的居所がある者について、滞在が183日未満で、かついずれの国の居住者であるかを証明できない場合に、ベトナムの居住者とすると定めています。
裏を返せば、183日未満の滞在で、かつ他国の居住者であることを証明できれば、定常的居所があってもベトナムの居住者にはなりません。
| 旧 通達111/2013/TT-BTC | 新 政令253/2026/NĐ-CP | |
|---|---|---|
| 条文の参照先 | 「本項の規定により」 | 「本条第2項の規定により」 |
| TRC保有者への適用 | 文言から一意に読み切れない | 第2項に含まれるため適用される |
旧通達も同じ規定を置いていましたが、参照先の書き方から、TRC保有者に及ぶのかを一意に読み切れませんでした。新政令が「本条第2項」と明記したことで、この点は解消されています。
居住証明として何を出すか
政令は「居住証明書」とのみ定めており、発行機関を指定していません。日本の居住者であることを主張する場合、税務署が発行する居住者証明書のほか、住民票を提出する運用も見られます。
税務書類の言語はベトナム語なので、翻訳して納税者が署名押印する必要があります。一方、領事認証については、通達80/2021/TT-BTC第85条が限定列挙した手続きに限られており、居住者判定はここに含まれません。
ただし租税条約に基づいて二重課税の排除を申請する場合は別で、相手国の税務当局が発行し領事認証を経た居住証明書が求められます。「居住証明には公証が必要」という説明は、この手続きを指している場合があります。
ただし「確実」はない
どの書類が受理されるか、領事認証が本当に不要かという点は、法令に明記がありません。税務署や担当者によって判断が分かれることがあり、それが数年に一度の税務調査時に初めて判明することもあります。
事前に法令を把握したうえで、判断が分かれた場合にどう説明するかまで用意しておく。これが現実的な備え方です。
渡航前に確認すべき二点
非居住者として扱われたいなら、確認は二点です。課税年度ごとの滞在が183日未満に収まるか。他国の居住証明を用意できるか。
後者は書類の問題に見えて、実際には事実の問題です。日本で住民登録を抜いている場合、住民票は取得できません。税務署発行の居住者証明書も、日本の税法上の居住者でなければ発行されません。どの国の居住者でもない状態では証明ができず、ベトナムの居住者として扱われます。
条文の詳細、初年度の日数の数え方、書類要件の比較表など、より詳しい内容は以下の記事にまとめています。
詳しくはこちら: ベトナム税務居住者の判定基準|183日ルールの落とし穴(InfoBank)
また、政令253/2026/NĐ-CP第4条・第5条の原文と対訳、旧通達111/2013からの変更点については、条文編としてこちらにまとめています。
条文編: ベトナム個人所得税・居住者判定の条文を読む|政令253/2026第4条
ベトナムでの駐在・出張と個人所得税でお悩みの方へ
居住者判定、必要書類の準備、TRC取得との関係について、状況にあわせて整理します。